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肥満傾向の女性の減量効果を研究 低炭水化物 vs 低炭水化物+運動に有意差なし、ただし不安レベルは抑制

太り気味の女性が、低炭水化物食のみ行う場合と、それに運動を並行して行う場合とで差が生じるかを検討した研究結果が報告された。減量効果には有意差がなく、一方で不安レベルは後者で抑制されたという。中国からの報告。

肥満傾向の女性の減量効果を研究 低炭水化物 vs 低炭水化物+運動に有意差なし、ただし不安レベルは抑制

低炭水化物食と運動療法の組み合わせ効果をRCTで検討

低炭水化物食事療法(low-carbohydrate diet;LCD)は、比較的迅速に体重減少を引き起こすことから、近年、取り組む人が増加している。またLCDは減量のほかに心血管代謝リスクを抑制する可能性が指摘されている。

一方、食習慣の変更によってメンタルヘルス状態の変化が生じることが知られている。ただし、低炭水化物食事療法(LCD)に変更した場合のメンタルヘルスへの影響は、生理学的な影響ほどには研究されていない。これまでのところ、LCDへの変更によって不安やうつレベルが低下するという研究結果もあれば、正反対に、うつレベルを悪化させ得るという報告もある。

他方、減量手段としては食事療法以外に運動療法も重要。ただ、LCDと運動療法を組み合わせた場合にLCD単独と効果が異なるのかという点は、これもまた現時点では不明。

このような背景のもと、今回紹介する論文の著者らは、4週間のLCD単独介入と運動療法を加えた介入とで、心理学的指標や生理学的指標に差が生じるか否かを、無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)で検討した。

LCD単独、運動療法並行、対照群の3群で4週間介入

既報研究に基づく予測から、後述の研究デザインで有意差を検討するには、ドロップアウトが25%発生するとした場合、各群27人を割り当てる必要があると計算された。これにより、81人の中国人女性が募集された。研究参加の適格条件は、年齢が18~30歳でBMIが23以上の過体重傾向の女性であり、心血管代謝疾患がなく、過去6カ月間に習慣的な運動を行っていないこと。除外条件は、なんらかの疾患の治療薬が処方されていること、喫煙者・習慣的飲酒者(過去6カ月以内の禁煙者や断酒者を含む)、体重が不安定な人など。

無作為に27人ずつの3群に割り付けた。1群は低炭水化物食のみで介入する「LCD群」、他の1群はLCDに運動療法を加える「LCD+EXE群」、残りの1群はいずれも行わない「対照群」。

LCDは炭水化物10%(約50g/日)で実施

4週間の介入期間の前に2週間の準備期間を設け、毎日の食事記録、および、LCDの遵守の確認のための尿ケトン測定の方法に習熟してもらった。

LCDは、脂質65%、タンパク質25%、炭水化物10%(50g/日)を目安として、サンプル食品・飲料やレシピを示したハンドブックを手渡し、習熟期間中にそのような栄養素摂取にするための食品選択方法を学んでももらった。また介入期間中には栄養士が個別にサポートした。

運動療法は中強度運動群と高強度運動群に二分

LCD+EXE群には上記のLCDに加えて、参加者を二分し、中強度持続運動(moderate-intensity continuous training;MICT)または高強度インターバル運動(high-intensity interval training;HIIT)による介入を行った。

運動負荷にはいずれも自転車エルゴメーターを用い、中強度持続運動(MICT)群は50~60%VO2peak、50±5rpmで30分とした。高強度インターバル運動(HIIT)群は9秒間の回復期間を挟んだ6秒間のオールアウトを10回とした。

不安レベルや心血管代謝指標の一部に有意差

では、結果をみていこう。

まず、ベースラインデータをみると、摂取エネルギー量(約2,040kcal)、栄養素の比率(炭水化物45%、タンパク質15%、脂質35%)は各群ほぼ同等で有意な群間差はなかった。また、歩数計で把握された身体活動量も有意差がなかった。年齢やBMI、VO2peak、および血圧等の生理学的指標も有意な群間差はなかった。

次に、介入に伴う食事の変化だが、LCD群とLCD+EXE群の摂取エネルギー量はベースラインから変化せず、栄養素のバランスは目標どおりに変化した。尿ケトン体は、LCD群では測定された日の96.7±5.9%、LCD+EXE群では同96.0±7.9%が陽性であり、LCDが良好に遵守されていたことが確認できた。

LCD+EXE群の運動については、中強度持続運動(MICT)群は週150分、4週間で計600分、高強度インターバル運動(HIIT)群は週12.5分、計50分実施されていた。トレーニング中の自覚的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)は、MICT群が11±1、HIIT群は13±2であり、後者のほうが有意に高かった(p<0.01)。

体重や生理学的指標の変化

介入により体重は、LCD群-2.38±1.82kg、LCD+EXE群-2.97±1.08kgであり、いずれも対照群の-0.27±1.61kgより減量幅が有意に大きかった(いずれもp<0.01)。BMIやウエスト周囲長も同様に、LCD群、LCD+EXE群の減少幅は対照群より有意に大きかった(いずれもp<0.01)。LCD群とLCD+EXE群とのこれらの減少幅は有意差がなかった。

血圧に関しては、LCD群と対照群は有意な変化がなく、LCD+EXE群は収縮期血圧が-5±8mmHgであり、これは対照群より有意に低下幅が大きかった(p<0.05)。同様にVO2peakは、LCD群と対照群は有意な変化がなく、LCD+EXE群は3.56±2.42mL/kg/分上昇し、これは対照群およびLCD群より有意に上昇幅が大きかった(いずれもp<0.01)。

このほか、LCD群とLCD+EXE群では対照群に比し、インスリン、C-ペプチド、レプチンの有意な低下、総コレステロールとLDL-コレステロールの有意な上昇が認められた。

メンタルヘルスや摂食行動の変化

続いてメンタルヘルス状態の変化をみると、不安レベル(the 7-item generalized anxiety disorder scale;GAD-7)は、対照群は介入前が5.1±3.6、介入後が6.1±3.8、LCD群は同順に5.0±3.6、7.4±5.1、LCD+EXE群は6.1±2.5、4.7±3.1であり、前二者は有意な変化がなかったが、LCD+EXE群は介入後の値が対照群(p<0.05)、LCD群(p<0.01)より有意に低値であり、不安レベルの改善が示された。LCD群は有意でないながら、不安レベルの上昇傾向がみられた。

摂食行動については、全群ともに、感情的な摂食、外食の頻度などに有意な変化はなかった。

以上より論文の結論は、「LCDと運動を組み合わせても、太り気味の若年女性の体重をさらに減らすことはできないかもしれないが、運動の追加によって心血管代謝状態が改善され、不安レベルが低下する可能性がある」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effect of a Low-Carbohydrate Diet With or Without Exercise on Anxiety and Eating Behavior and Associated Changes in Cardiometabolic Health in Overweight Young Women」。〔Front Nutr. 2022 Jul 6;9:894916〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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