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筋トレ男性を対象に、タンパク質の摂取量と筋肉・パフォーマンス・肝臓・腎臓への影響を調査した結果

ふだんレジスタンストレーニングを行っている男性を対象に、タンパク質摂取量を1.6g/kg/日または3.2g/kg/日のいずれかとして16週間介入し、体組成や筋力、および懸垂、垂直跳び、持久力のパフォーマンスへの影響に差が生じるかを検討した研究結果が報告された。また、肝機能と腎機能のマーカーも測定し、それらの臓器への負担の違いも評価されている。結論には、「タンパク質1.6g/kg/日の摂取は、肝・腎機能マーカーに影響を与えることなく、下半身のピークパワーを除いた除脂肪体重、筋力、パフォーマンスの最大化に十分であり、若く健康な男性の安全な摂取量として許容される」と述べられている。

筋トレ男性を対象に、タンパク質の摂取量と筋肉・パフォーマンス・肝臓・腎臓への影響を調査した結果

タンパク質摂取量とトレーニング内容とで4群に群分けして16週間介入

この研究の参加者は、ソーシャルメディアでの募集に応じた18~36歳の健康でレジスタンストレーニングを行っている男性48人。適格条件として、週3回以上、過去1年以上のレジスタンストレーニング歴があり、1日の睡眠時間が7時間以上であって、ステロイドまたは違法薬物を使用しておらず、タンパク質摂取量が1.6g/kg/日未満であり、筋骨格系の障害がないこと。

参加者を無作為に以下の4群に分類(各群12人)し、16週間の介入を行った。なお、介入期間中のタンパク質摂取量は食事記録から把握され、介入前および介入中は2週間の栄養士の面接指導により摂取量が維持された。また、研究計画時点では、介入期間を6カ月と設定していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックのため、16週間に短縮された。

4群の介入条件

中用量タンパク質+複合トレーニングの「CT1」群
食事介入ではタンパク質摂取量を1.6g/kg/日とし、運動介入ではレジスタンストレーニングと持久力トレーニングの双方(concurrent training〈並行トレーニング.CT〉)を行う「CT1」群。
高用量タンパク質+複合トレーニングの「CT2」群
食事介入ではタンパク質摂取量を3.2g/kg/日とし、運動介入では並行トレーニング(CT)を行う「CT2」群。
中用量タンパク質+レジスタンストレーニングの「RT1」群
食事介入ではタンパク質摂取量を1.6g/kg/日とし、運動介入ではレジスタンストレーニングのみを行う「RT1」群。
高用量タンパク質+レジスタンストレーニングの「RT2」群
食事介入ではタンパク質摂取量を3.2g/kg/日とし、運動介入ではレジスタンストレーニングのみを行う「RT2」群。

ベースライン時点の体組成やパフォーマンス、栄養素摂取量、トレーニング量など、本研究の解析に関連するパラメーターに、群間の有意差は認められなかった。介入中のCOVID-19罹患、筋骨格系障害の発生による脱落、データ欠落などにより、各群1人が解析対象から除外され、各群11人で解析が行われた。では、介入前後での変化をみていこう。

体組成やパフォーマンス関連指標の変化

体組成

除脂肪体重は全群で介入後に有意に増加していた。体脂肪率および内臓脂肪量は、CT1群でのみ有意に低下していた。

パフォーマンス

チェストプレスパワー、レッグプレスパワー、上半身のパワー、下半身のパワーそれぞれの絶対値、プルアップ、垂直跳びは、介入後に全群で有意に向上していた。チェストプレスの持久力はRT2群のみ有意に向上していた。レッグプレスの持久力はCT2群のみ有意に向上していた。なお、体重換算したチェストプレスの持久力、レッグプレスの持久力、上半身のパワー、下半身のパワーは、全群で有意に向上していた。

VO2maxは、持久力トレーニングを含む並行トレーニングを行ったCT1群とCT1群とで有意に向上していた。一方、レジスタンストレーニングのみを行ったRT1群とRT2群は有意な変化がみられなかった。

介入による肝・腎機能マーカーの変化

肝機能マーカー

肝機能として評価したγ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-glutamyl transferase;GGT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase;AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase;ALT)はいずれも、タンパク質摂取量が中用量(1.6g/kg/日)だったCT1群とRT1群は、介入による有意な変化がなかった。

それに対して、タンパク質摂取量が高用量(3.2g/kg/日)だったCT2群とRT2群はともに、介入により有意に上昇し、肝臓への負荷が生じたことが示唆された。

腎機能マーカー

腎機能として評価したクレアチニンと尿素窒素(blood urea nitrogen;BUN)はいずれも、タンパク質摂取量が中用量(1.6g/kg/日)だったCT1群とRT1群は、介入による有意な変化がなかった。

それに対して、タンパク質摂取量が高用量(3.2g/kg/日)だったCT2群とRT2群はともに、介入により有意に上昇し、腎臓への負荷が生じたことが示唆された。

タンパク質1.6g/kg/日のほうが安全であり、パフォーマンスへの影響はほぼ同等

これらの結果を総括して、論文の結論は以下のようにまとめられている。

「1.6または3.2g/kg/日による介入は、筋力と筋肉量、絶対的な上半身のパワー、およびパフォーマンスの適応において、同様の向上効果をもたらす。これは、下半身の絶対的なピークパワーを除いて、アスリートは1.6g/kg/日のタンパク質摂取でメリットを得られることを示している。加えて、タンパク質を3.2g/kg/日摂取した場合、肝機能・腎機能マーカーが有意に上昇した。つまりタンパク質を3.2g/kg/日と比較して1.6g/kg/日のほうが長期的には安全と言える。また、群間の比較で垂直跳びと懸垂は、1.6/g/日群のほうがより大きく向上していた。健康で比較的若い男性では、1.6g/kg/日のタンパク質摂取は安全であり許容される」。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of 16 weeks of two different high-protein diets with either resistance or concurrent training on body composition, muscular strength and performance, and markers of liver and kidney function in resistance-trained males」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2023 Dec;20(1):2236053〕
原文はこちら(Informa UK)

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