タンパク質をしっかり摂るレシピ【お魚料理・前編】 鈴木志保子 × こばたてるみ(公認スポーツ栄養士)
【前編】まぐろアボカド丼
動画撮影日:2020年5月14日
出 演
こばた てるみ 管理栄養士、公認スポーツ栄養士
株式会社しょくスポーツ代表取締役。健康運動指導士、日本酒スタイリスト。Jリーグやプロ野球、競泳オリンピックメダリスト、箱根駅伝選手などのトップアスリートの栄養サポート経験が豊富な上、ジュニア選手やスポーツ愛好家への食事アドバイス、企業の健康づくりにも関与。理想の食事だけでなく、主婦、母親として日々おこなっている食事作りをもとに「おいしい・簡単・栄養リッチ」なメニューを提案し、選手やそのご家族等から人気を博している。NPO法人日本スポーツ栄養学会理事、国立大学非常勤講師も務める。
一般社団法人日本スポーツ栄養協会理事長。公立大学法人神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教授。
実践女子大学卒業後、同大学院修了。東海大学大学院医学研究科を修了し、博士(医学)を取得。2000年より国立鹿屋体育大学体育学部助教授、2003年より神奈川県立保健福祉大学栄養学科准教授を経て、2009年4月より現職。(公社)日本栄養士会副会長、NPO法人日本スポーツ栄養学会前会長、日本パラリンピック委員会女性スポーツ委員会委員、東京2020組織委員会飲食戦略検討委員など役職多数。
鈴木 今日は、たんぱく質を摂ろうシリーズ第1弾「お魚」の簡単レシピと調理の工夫を、公認スポーツ栄養士のこばたてるみ先生をお迎えして教えていただきます。まずは先生、自己紹介から。
こばた こんにちは!こばたてるみです。私はトップアスリートをはじめ、ジュニア選手やスポーツ愛好家の皆さんのアドバイスを行っています。また、子どもから大人まで、広い対象者への食育活動にも力を入れております。代表を務める(株)しょくスポーツでは、色々なイベントやオンライン講座も開催していますので、ホームページをご覧ください。
鈴木 ありがとうございます。コロナ禍で外食できず、魚に飢えているという選手がたくさんいます。魚の調理に慣れていない人でもできる、美味しくて簡単で栄養価の高いレシピをお願いいたします!
- 主食・主菜:まぐろアボカド丼
- 副菜(汁物):青梗菜と干し椎茸のすまし汁
- 副菜:ポテトとトマトのチーズ焼き
- 副菜:キャベツの塩昆布和え
- 果物・乳製品:りんごヨーグルト
こばた はい、今日は「まぐろアボカド丼」をご紹介します。まぐろは日本人が大好きな食材ですよね。今回はまぐろの赤身を使っていきます、ビタミン B1、B6 が豊富なまぐろの赤身と、森のバターともいわれるほと脂質が豊富なアボカドには、ビタミン B1、B2、B6、E、カリウムが含まれます。そして主食のご飯からは糖質、さらにトッピングした 卵黄からビタミンAやたんぱく質、鉄分も摂取することができる"栄養リッチ"な一品です。卵は温泉卵を使ってもいいと思います。
まぐろとアボカドは、しょうゆとみりんと煮切り酒で作った調味だれに漬けています。ポイントはこの煮切り酒。日本酒のアルコールを飛ばしたもので、うま味が強く、しょうゆの塩分をまろやかにしてくれ減塩にも役立ちます。ごま油とわさびも入っているので、風味もパンチもあり、満足感の高い丼になります。
お刺身として、まぐろを召し上がってもよいのですが、どんぶりにすることで主食のごはんも一緒に摂ることができ、暑さで食欲が停滞しがちな時にも食べやすいと思います。
- まぐろ赤身※ 100g
- アボカド 1/2個
- ごはん 220g
- 卵黄 1個
- 大葉 2枚
- きざみのり 適量
- しょうゆ 大さじ1.5
- みりん 大さじ1
- 煮切り酒 小さじ1
- ごま油 少々
- わさび 小さじ1/2
- まぐろは一口大に切る。アボカドは皮と種を除いて1.5cm角に切る。
- Aの材料をボウルに入れて混ぜ、1を加えてサッと混ぜる。
- 器にご飯を盛り、大葉と2、中央に卵黄をのせ、きざみのりをトッピングする。
こばた 醤油とみりんは1:1にすると大体どの味も定着します。甘辛さを減らしたいときは、先ほど説明した煮切り酒を入れるといいと思います。煮切り酒は、お鍋に日本酒を入れ、1分くらい沸騰させるとアルコールが飛んで完成します。多めに作ったら冷蔵庫で保管。その時だけ使う場合はレンジを使ってアルコールを飛ばす方法もありますね。
鈴木 調理で使うお酒は何を使ったらいいんですか? 購入する際の秘訣があれば教えてください。実はこばた先生、日本酒スタイリストっていう資格をもっていて、日本酒に詳しいんですよね。いつか調理用ではない日本酒の話も聞いてみたいところですが(笑)
こばた はい、実際にお飲みになるものを使っていただいて構わないのですが、料理酒として売られているものは、酒税がかかっていないのでお安いんです。それはなぜかというと、お塩が入っているんですね。ですから料理酒ではなく、安くてもいいので日本酒を買うということ。お塩が入っていないというのが大きなポイントになります。日本酒を使うことで、素材の旨さを引き出すことができますし、肉や魚を漬けると身が固くなりにくいなど、色々メリットがあります。
鈴木 すごく勉強になりますね! ところで先生、まぐろのお刺身ですが、あまり料理のことを知らない選手から、どんなまぐろを買えばいいの?といった疑問が出てくると思います。先生はどうやって選んでいますか?
こばた スーパーで刺身用に切られているものが便利ではありますが、丼に使うときはある程度量が必要なので、柵(さく)で買ったほうが安いです。今回の丼では、20cm位の柵を買ってきたらそれを10等分位のひと口大に切り分けるイメージ。魚の臭いがまな板につくのが嫌という方は、牛乳パックを開いてシート状にしてまな板がわりにすると便利です。
鈴木 よくある質問ですが、アボカドはどうやって下処理しますか?
こばた どうやって剥くの?という質問多いですよね(笑) アボカドは縦に置いて包丁を真ん中からぐるっと1周入れます。そして両手で持ってひねると2つに割れます。片側に丸い種がくっついてきますが手ではなかなか取れません。包丁の柄の角の部分(アゴ)で種を軽く刺し、横にねじるとキレイにとれます。皮ですが、半分のまま皮をむこうとするとうまくいきませんので、もう1回切って4等分にすると、バナナの皮をむくようにうまく外せます。
鈴木 すばらしい、1人暮らしの選手でも作れそうですね。
「まぐろアボカド丼」の付け合わせ
鈴木 バランスのよい献立として、丼の付け合わせも考えていただいています。こばた まぐろアボガド丼は主食・主菜が入っていますので、それ以外を付け合わせでまかないます。副菜は、青梗菜と干し椎茸のすまし汁、ポテトとトマトのチーズ焼き、キャベツの塩昆布和えを添えました。果物・乳製品は、りんごヨーグルト。選手の食欲を上げるために、いろどりをよくすることを心がけています。
鈴木 これは食欲上がりますよね。すまし汁の出汁はどうしているんですか?
こばた 今回は昆布と鰹節で出汁をとっていますが、もっと簡単にとれる方法がありますのでご紹介しますね。スーパーへ行くと、花かつおという大きめの袋に入った鰹節が売っています。おわんに茶こしをセットして花かつおをひとつまみ入れ、熱湯を注ぐと、それだけでもういい出汁が出ます。
もちろん簡便な市販の風味調味料を使ってもいいのですが、こうやって本物の鰹節から簡単に出汁をとることができることも知っておくといいと思います。出汁をとり終わった鰹節はそのまま食べるもよし、みりん・醤油を加えてフライパンで乾煎りすると佃煮にすることもできます。
鈴木 ポテトとトマトのチーズ焼きも教えてください。
こばた やはりスポーツ選手の場合、エネルギー源として糖質は重要になりますので、主食のご飯以外にも糖質が摂れるものということで、ポテトをプラスしました。レンジでチンでできる一品です。
鈴木 自粛期間中で運動量が少なくなっている選手でエネルギー量を減らしたいという場合、ご飯そのままでポテト料理を削るか、ご飯を減らしてポテト料理も入れるか。こばた先生ならどうしますか?
こばた 選手の嗜好にもよりますが、ご飯を減らしてもポテトを入れる方ですかね。やはり色々な食材をとってもらいたいということと、他の栄養素もとれますので。
鈴木 写真では、ポテト・トマトが交互に入っていますが、トマト量を増やしポテト量を減らすなどしてエネルギー量を調整していくこともできますね。ご飯好き、米好きでどうしても減らしたくない!という方は、玄米や雑穀を入れてかさ増しする手もあります。
こばた キャベツの塩昆布和えは、ざく切りにしたキャベツに市販の塩昆布を混ぜただけ。皮つきりんごを使ったヨーグルトも合えるだけなので簡単です。
鈴木 手軽にできる料理や作り方をご紹介いただき有難うございました! 今回もう1品用意していただいていますので、後編をご覧ください。