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高温加熱でタンパク質の消化・吸収性が低下? 大豆タンパク質を用いた研究で新知見

高温加熱処理による食品タンパク質の消化・吸収性の変化と、それが生体に及ぼす影響を詳細に検討した結果が報告された。京都大学などの研究グループの成果であり、論文が「npj Science of Food」に掲載された。レトルト食品の高温加熱処理により、血中遊離アミノ酸量などが変化する可能性があるという。

高温加熱でタンパク質の消化・吸収性が低下? 大豆タンパク質を用いた研究で新知見

研究の概要:高温加熱したタンパク質を摂取すると、どんな変化が生じ得る?

京都大学、奈良女子大学、大分大学、奈良県立医科大学の研究グループは、高温加熱がタンパク質の消化・吸収性と生体に及ぼす影響を調べた。

分離大豆タンパク質を10%懸濁液とし、レトルト食品加工を模した条件(121℃、20分)でオートクレーブ処理したところ、タンパク質の一部に化学的な変化が生じ、消化されにくいタンパク質やペプチドが増加した。

加熱した大豆タンパク質をマウスに投与すると、摂取60分後の血中遊離アミノ酸量が未加熱群より約25%低下した。6週間継続して与えたマウスでは、社会的新奇性行動の変化と、末梢血中セロトニン濃度の低下が認められた。

本研究は、高温加熱がタンパク質の体内での利用されやすさや生体応答に影響し得ることを示している。研究者らは、「今後は加熱で生じる変化の原因物質を特定するとともに、缶詰やレトルト食品など実際の食品中でも同様の変化が生じているのかを明らかにし、栄養性やヒトへの影響を検証する」としている。

研究の背景:保存のための加熱殺菌は、血中アミノ酸応答や生体反応へ影響するか

レトルト食品や缶詰などでは、食品を長期間安全に保存するため、100℃を超える高温での加熱殺菌※1が広く用いられている。高温加熱は微生物やその芽胞を不活化できるだけでなく、大豆などに含まれる消化酵素阻害物質を失活させることから、食品の安全性や消化性を高める有用な加工技術と言える。

タンパク質の強い加熱によってリジノアラニン※2などの化学修飾が生じ、消化性やアミノ酸利用性が低下することは以前から知られていた。一方、レトルト食品加工を模した水分存在下の条件で加熱したタンパク質を摂取した際の血中アミノ酸応答や、長期摂取による生体応答については十分に検討されていなかった。

そこで本研究では、食品化学・分析を専門とする研究者と、動物の行動・神経科学を専門とする研究者が共同し、食品加工によるタンパク質の化学変化から、消化、吸収、さらには摂取後の生体応答までを一連の流れとして解析した。

※1 レトルト殺菌:密封した食品を100℃を超える高温で加熱し、微生物や芽胞を不活化する食品加工法。本研究では、そのモデルとして121℃、20分の加熱を行った。
※2 リジノアラニン:タンパク質を強く加熱した場合などに、アミノ酸残基同士の反応によって生じる架橋構造の一つ。形成されると利用可能なリジン量やタンパク質の消化性に影響する可能性がある。

研究手法・成果:血中遊離アミノ酸量、社会的新奇性行動、セロトニン濃度が変化

本研究では、分離大豆タンパク質を水に10%となるように懸濁し、121℃、20分で加熱した。加熱後には、分析で測定される総アミノ酸量が約10%減少し、消化酵素で処理しても分解されにくいタンパク質やペプチド※3が増加した。

さらに、加熱した大豆タンパク質をマウスに単回投与すると、摂取60分後の血中遊離アミノ酸量が未加熱群より約25%低下した。6週間継続して与えたマウスでは、体重や不安様行動などに明確な差はみられなかったが、新しい個体への関心を示す社会的新奇性行動※4が変化し、末梢血中セロトニン※5濃度も約50%低下した。

※3 ペプチド:複数のアミノ酸が結合した物質。通常、食品タンパク質は消化酵素によって小さなペプチドやアミノ酸へ分解された後、体内に吸収される。
※4 社会的新奇性:マウスが、すでに接触した個体よりも新しく出会った個体に関心を示す性質。本研究では三つの部屋からなる装置を用いて評価した。
※5 セロトニン:アミノ酸のトリプトファンから作られる生理活性物質。脳だけでなく、体内のセロトニンの多くは消化管で作られる。本研究で測定したのは主として末梢血中のセロトニン。

波及効果、今後の予定:栄養性との両立が可能な加工条件の提案へ

本研究は、高温加熱によってタンパク質の消化・吸収性や生体応答が変化する可能性を示した。一方で、本研究は大豆タンパク質を用いたモデル実験とマウスでの検討であり、市販のレトルト食品やヒトで同じ影響が生じることを示したものではない。また、末梢血中セロトニンの低下と社会的新奇性の変化との因果関係も明らかになっていない。

今後は、さまざまな成分が共存する実際の食品でも同様の変化が生じるのかを検証するとともに、安全性を維持しながら加熱によるタンパク質の変質を抑え、栄養性との両立が可能な加工条件の提案につなげる研究を進める。

関連情報

高温加熱処理で変わる食品タンパク質―消化吸収と社会行動への影響―(京都大学)

文献情報

原典論文のタイトルは、「High-temperature-treated soy protein isolate reduces amino acid availability and alters social novelty in mice」。〔NPJ Sci Food. 2026 Sep 03〕
原文はこちら(Springer Nature)

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